アクティブファンドで使われる二つの運用手法
ファンドにおいて、大きく分けると二つの手法が存在します。ジャッジメンタル運用とクオンツ運用です。どちらが運用手法として優れてるものでもなく、特徴やメリット、デメリットが存在します。今回はその二つの手法を簡単にご紹介します。
ジャッジメンタル運用
ジャッジメンタル運用とは、裁量運用とも言われ人間(ファンドマネージャー)が自分で判断して運用することです。
例えば会社の財務状況や業績動向を分析し、ファンドマネージャーが「この会社は業績が良くなり株価が上がりそうだ」と判断したらその株を買います。一般的なファンドのイメージはこちらではないでしょうか。
ジャッジメンタル運用の特徴
ジャッジメンタル運用のメリットとしては、ファンドマネージャー独自の感性や知識、経験を総動員し、個性的な運用ができる点です。世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏や、日本の著名ファンドマネージャーである藤野英人さんも、このジャッジメンタル運用です。
また、投資家に運用成果を報告する際のメリットもあります。「本社や工場を見学し、経営者と会い、決算資料だけではわからない会社の魅力や成長性を感じた」と言われたら、誰でも納得してしまうのではないでしょうか。
デメリットとしては、ファンドマネージャーへの依存度が高いこと、そして実力の評価が難しい点が挙げられます。ファンドマネージャーも1人の人間ですので、病気の時や家庭トラブルなどがあった時、いつも同じように合理的で冷静な分析や判断ができるとは限りません。しかしそのようなときでもマーケットは動いており、常に判断を迫られることになります。
ファンドマネージャーの実務経験が重要
2013年以降の株式市場は、2018年末の下落や2020年のコロナショックを除けば概ね上昇傾向にあり、株式投資家にとって比較的簡単なマーケット環境だったと言えます。
従って、2008年のリーマンショックという未曽有の金融危機を経験していないファンドマ ネージャーは株式投資に対して楽観的な印象を持っており、リーマンショックのような株価急落時にどのように行動すれば良いのかわからないと非難されることがあります。
ただ、このような経験不足については言いだしたらキリがないです。ファンドマネージャーの若い才能は、パフォーマンスが良かったとしても評価されづらくなってしまいます。また、もっとベテランの方は「リーマンショックだけでなく、ITバブルを経験していないとダメ」とも言いますので、キリがありません。
クオンツ運用
それでは、もう1つの運用手法であるのが「クオンツ運用」です。 クオンツとは、Quantitative (数量的、定量的)から派生した言葉で、高度な数学的手法を用いて金融市場を分析することを指します。
このような分析手法を用いて投資することを、「クオンツ運用」といいます。例えば、日経平均株価の日々のデータは蓄積しており、何十年分ものデータがあります。 その値動きは一見ランダムに動いていて予測不可能に見えますが、コンピューターを使ってデータ分析することで、値動きの中に何らかの規則性を見つけ出すことができると考えられており、その規則性を利用して投資を行うことをクオンツ運用と呼んでいます。
クオンツ運用の特徴
さらに具体例を出すと、各曜日の上昇確率を検証し、月曜日が他の曜日に比べて明らかに上昇しやすいという分析結果になったので、「月曜日に日経平均株価を買い、火曜日に売る」という投資戦略に繋がるということです。
もちろん実際にはこんな単純なものではなく、色々と複雑な分析や計算と検証が必要ですが、大量のデータをコンピューターで統計的に分析し、投資判断を行う運用のことです。
クオンツ運用の大きなメリットの1つが、過去のシミュレーションができることです。 統計的に分析して考案した投資戦略は、「Aという条件を満たしたら買う」といった数式のようなもので定義されます。
この数式を過去のマーケットに当てはめることで、仮に2008年のリーマンショック時に運用していたらどんなパフォーマンスになったのか、シミュレーションすることが可能なのです。 これにより、自分が生まれる前の時代でさえもバックテストすることができるのです。
再現性の高いクオンツ運用
そして、万が一もしファンドマネージャーが急に亡くなったとしても、定められた数式を使うことで他の人でも同じ運用をすることができます。もちろん戦略のアップデートは必要ですが、ファンドマネージャーの頭の中にあるものと異なり、戦略が数式として形に残されており、再現性が高いというのもメリットの一つです。
そのようなクオンツ運用の中身は決して外部には出ません。勝てる確率の高い方程式を見つけたファンドマネージャーは、自分たちのファンドの運用成績を上げるために必死なので、もしそれが外部に出てしまい同様の運用をする人が増えたらもうその方程式では勝てません。
当社の周りにもたくさんのクオンツ運用ファンドがありますが、具体的な中身はどれもわかりません。だからこそ、彼らのファンドに投資をして、プロに運用成績を良くしてもらうことが重要なのではないでしょうか。