超富裕層になるための投資術として、10年以上超富裕層の資産運用を見てきた経験から、いくつか特徴を示して行ければと思います。
今回は、超富裕層の投資における「ホームカントリーバイアス」についてお伝えします。
ホームカントリーバイアスとは
ホームカントリーバイアスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、投資家が海外投資に慎重になり、国内資産の投資に偏ってしまう傾向のことです。人間はどうしても自分の国を基準として優先的に考えてしまうので、自国の投資に偏重してしまいます。
ホームカントリーバイアスにかかりやすい理由としては、まず、海外よりも国内に関する情報の方が身近であるからでしょう。例えば、国内投資の期待リターンが外国投資に比べて同じくらいであれば、国内投資のほうが安心と考えるはずです。
また、国の文化の相違も関係します。さらに、投資家のリスク許容度が高くないため、海外投資に消極的になるといった理由も考えられます。
これ以外にも機関投資家の運用などでは、外貨建て資産に関する運用規制がかかっていることもあります。これについてはホームカントリーバイアスを無くすために規制を緩くしているところが増えています。
自分の国を好きでいることはとても大切ですが、投資の世界においてはその固定観念は一旦リセットする必要があります。特に、投資を成功させ続けている超富裕層などは、ホームカントリーバイアスが特に少ない傾向にあります。
圧倒的にバイアスのかかりやすい日本人
日本人は、特にこのホームカントリーバイアスにかかっています。例えば、確定拠出年金の運用商品選択状況を見ると、投資信託に占める国内株式型の投資比率は企業型で59%、個人型で54%と、外国株式型よりも投資比率が高いです。
日本に住む個人投資家にとって、土地勘や企業文化に関する知識があり、為替リスクを直接受けない日本株の投資比率を高くすることは自然だとは思います。しかし、投資の世界では明らかに「過剰投資」であり「偏重」しています。
MSCI全世界株指数における日本株の構成比率はわずか7%であり、これは世界の名目GDPに占める日本の名目GDPの割合とほぼ同じです。
時価総額や経済規模で見れば、世界における日本の占める割合は10%にも満たないです。なので、日本株の投資比率が過半数を占めていることは、明らかに過剰投資です。
ホームカントリーバイアスを排除すべき理由
日本人にとって、日本株や日本国債が海外の資産に比べて期待リターンが高いのであれば、日本偏重の投資でも全く問題ありません。
しかし、投資という観点で見ると、日本は決して魅力的な国ではありません。投資には様々な尺度がありますが、過去のパフォーマンスを見る限り、日本株のパフォーマンスよりも米国株の方が遥かに高いパフォーマンスを出していることは明らかです。
日本の株式市場は平成の30年間で約0.7倍と30%近く下落しましたが、米国は同期間に12倍まで値上がりしています。
また、過去10年間のリスク・リターンを計測すると、全世界株のリスクは日本株と大差ないものの、リターンは長期にわたって日本株を上回っています。日本株を中心に運用してきた個人投資家にとっては、本来得られたであろう全世界株における相対的に良好なリターンを享受できなかったことになります。
ホームカントリーバイアスは日本だけでなくどの国でもあるものですが、このように、日本の投資パフォーマンスが悪いことにより日本株偏重の投資は避けるべきです。
一方で超富裕層は、ホームカントリーバイアスがない=パフォーマンスの悪い日本株比率が小さい=投資で成功している、と言えるのではないでしょうか。